20208/2浪人135日目 残り167日
こんにちは。カイドウです。今日は学習の科学3段階目その4。3段階目は「能力を伸ばす」と題して、勉強を始めた頃に行うべき行動の指針を紹介しています。
この記事のシリーズの全容を捉えたいという方はこちらのまとめ記事をどうぞ
★学習を6ステップ解説!〜学ぶための学びの体系〜 - 一橋浪人生の勉強法
今日は、学習の心構えを改めて紹介したいと思います。
「心構えなんてそんな大事なの?」
大事です。心構えが行動を変えます。自分の中にある考え方を変えるだけで目に見えて結果が変わるんです。
わかりやすいのは、1段階目の「価値を見出す」で紹介した、統計学に価値を見出すためのエクササイズの例。実験では、統計学が生活のどのような所で役に立っているのかエッセイを書いた生徒は、統計学の勉強に価値を見出せるようになり評定が最大でCからBにあがりました。
あなたの勉強に対する考え方を変えることで、勉強の取り組み方にも変化が生まれて、実際に成績が伸びる可能性は十分にあります。
勉強は苦行。
第3段階目のフィードバックを実践していると必ずある壁が現れます。それが間違いの壁。
特にしっかりとフィードバックを行えば行うほど自分のミス、実力を直視しなければいけなくなります。
だから効率の良い学習には苦しい時間がつきものです。
「learn better」にもこう記述されています。
学習学分野の重鎮の意見はこの点でほぼ一致している。…認知心理学者のボブ・ビョークは知識の習得とは「望んでする苦労」だと述べている。トレーニングの第一人者、アンダース・エリクソンは練習を「苦行(ハードワーク)」と呼んでいる。…アリストテレスはかつて「学習は楽しみではなく、苦痛をともなうものだ」と述べた。
学習の本質が苦労をともなうもので、効率よく学習をしたいのであれば苦しい時間は避けられないようです。
では、なぜ学習は苦しいものなのでしょうか?
そこには脳の性質が関わっています。脳は可塑性といって環境に応じて変化する性質を持っています。例えば、イギリスのタクシードライバーは海馬が通常よりも発達していることが確認されています。空間を把握したり、記憶の中にある地図と実際の景色を一致させる作業によって海馬が発達したと考えられています。
そして、この脳の変化が起こるのは知的な苦労に対処しようとしたときです。
具体的には脳の白質と呼ばれる部分で構造の変化が起こるようです。脳は知的な苦労を感じた時、「これに対処しなければ!」と新しい神経構造を作り出すのです。
ですから、学習のフィードバックによって自分のミスに気づいた時、それを正そうとする時、私たちの脳の中では明確な構造の変化が起こっています。知的な苦労をともなう学習を進めれば進めるほど私たちの脳はそれに対処しようと成長するのです。
ストレスマインドセット
学習を進めると、つまづいたり、なかなか結果が出なかったり、模試前の結果を出さなきゃ!っていうプレッシャーだったり、いろんなストレスがあると思います。
そんな受験生なら誰しもが持っているストレスですが、ストレスに対する考え方を正しく改めるだけで実際に体内のストレスホルモンの分泌量が変わるということは以前一度紹介したと思います。
この項ではストレスが私たちの力になることを少しだけ紹介したいと思います。
ストレスを受けたときに私たちが見せる反応には実は3つの種類があるんです。それが、「闘争・逃走反応」「チャレンジ反応」「思いやり・絆反応」の3つです。
例えば原始時代、人間は狩猟採集をしていましたが、現代ではありえない獣に襲われるという状況もあったことでしょう。そういうときにこのストレス反応によって体中エネルギーを集結させて逃げるか、闘うかしていました。
現代でも、オレゴン州で2人の少女が1.3トンのトラクターを持ち上げて、下敷きなっていた父親を助けたことがあったそうです。火事場の馬鹿力ですね。これが闘争・逃走反応です。
次に、「思いやり・絆反応」。ちょっとした不満や今日あったイライラする出来事を誰かに話したくなったりしますよね。これはストレス反応でも「思いやり・絆反応」によるもの。
この反応が起こると人と繋がりたくなります。体の中ではオキシトシンというホルモンが分泌されます。このオキシトシンは「道徳のホルモン」とか「抱擁ホルモン」などと呼ばれていて社会的な繋がりを強化する役割もあります。
子供ができたことで親のストレスに対する反応が「闘争・逃走」から「思いやり・絆反応」が多い傾向に変わることもあるそうです。
最後にチャレンジ反応。ストレスにさらされるといってもライオンに襲われるとかではない限り、この反応が起こりやすいです。
具体的には、闘争・逃走反応とはストレスホルモンの割合が異なります。闘争・逃走反応の際にはコルチゾールというストレスホルモンの割合が高まりますが、チャレンジ反応が起こるとDHEA(デヒドロエピアンドロステロン)と呼ばれるホルモンの分泌量がコルチゾールに比べて多くなります。
このDHEAはストレスを通じて脳が成長することを促します。
コルチゾールに対するDHEAの割合はストレス反応の「成長指数」と呼ばれていて「成長指数」が高い大学生ほど粘り強く物事に取り組みテストのスコアも高い傾向が実験で確認されています。
私たち受験生がストレスから得たい反応はチャレンジ反応になります。
激しいプレッシャーの中で強い粘り強さを発揮してめげずに勉強を続けることができるのです。チャレンジ反応は逆境に強い心を作ります。
なのでストレスを感じたとき、「ああやってられない」とか物に当たるとかではなく、「今感じたストレスは体がどうにか対処しようと頑張ってるから感じたんだ。今は体が頑張っていていつもよりエネルギーがある状態なんだから、頑張ればきっとうまくいくぞ!」みたいな感じでストレスを肯定的に捉え直すようにしましょう。
マインドセットは割と数分の介入で成果が出ていたりするので、もしかしたらこの記事を読んでいただくだけで少しは考え方に変化が生じるかもしれません。
ただ、やはりちゃんとした成功事例や説明を読んでストレスに関する知識を得ることが一番のストレスマインドセット介入になると思うので、是非「スタンフォードのストレスを力に変える教科書」という本を読んでみてください。ページ数は350ページほどですが、文字が大きくてスラスラ読めます。
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成長マインドセット
こちらは一度この学習の科学シリーズで紹介しました。二段回目の学習の核となる3つの考え方のところですね。
マインドセットの中でも特に重要なものが「しなやかマインドセット」別名「成長マインドセット」です。逆にその反対のものとして「硬直マインドセット」というものもあります。
学習の実践段階になると、特に自分のミスが目立つようになります。そして「しなやかマインドセット」を持つ人と、「硬直マインドセット」を持つ人では失敗に対するは反応の仕方が180度異なります。
硬直マインドセットの人は才能で物事は決まると考えて自尊心が高い傾向があるので、自分が失敗したときにその誤りを認めず、今回の試験問題が悪かったなど他の要因のせいにして失敗から学ぼうとしません。自分の失敗を認めることで自分の才能が否定されるのが怖いのです。
一方しなやかマインドセットを持つ人たちは、失敗すると嬉々としてそこから学ぼうとします。
硬直マインドセットの人が自分の才能を証明したいのに対して、成長マインドセットを持つ人は自分が成長することに喜びを感じるからです。さらに努力によって成長することができると信じているので努力を惜しみません。
学習の実践段階において、効率の良い勉強法のためには多くのフィードバックが欠かせません。そしてフィードバックには必ずあなたの失敗やミスが多分に含まれています。フィードバックをもらってもそれを成長の糧にできないのであれば意味がないのです。是非マインドセットをしなやかにしましょう。自分のミスを受け止めてそこから成長できる切っ掛けを探しましょう。
成長マインドセットに関してもストレスと同じでしっかりとした知識とともに具体例を知るのが一番だと思います。なのでこの記事を読んだ後にできれば「マインドセット」という本を読んでみてください。
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マジックワード
最後に私がお気に入りのマインドセットをしなやかにする魔法の言葉を紹介します。
それが、「今はまだ〜ができない」というもの。
テストで成績が振るわないとき、自分はダメなやつなんだとか、試験の作りが悪いとかではなく、「今はまだ実力が及ばないだけだ。これから努力すれば確実に成績は上がる。」と考えましょう。
「俺はずっと数学が苦手なんだよな」ではなく、「今はまだ、難しくて苦手なだけだ。これから頑張って勉強すれば得意にだってなれる。」と考えましょう。
自分が卑屈になりそうなとき、周りのせいにしたくなったとき、このマジックワードを使ってみてください。
まとめ
今日は、学習の実践段階における、
- 困難
- ストレスマインドセット
- 成長マインドセット
について扱いました。抽象的な話が多くて具体的にパッと使えるテクニック解説ではないのであまり面白みがないかもしれません。
しかし、ただひたすら勉強をするだけが学習ではありません。学習をする上で大事なことは勉強以外にもたくさんあります。この一連の記事ではそういった勉強以外の学習の側面も含めて解説しています。
私はこれは気にしなくていいかな、俺はこの方法は使いにくいなと思ったら試す必要はありません。ただ、一つでも使えそうだとか、これはいいかもと思ったなら試してみてください。そして失敗したらまた違う方法を試してみてください。
科学は普遍性を求めますが完全な普遍性などほとんどあり得ないと思います。科学的な知識だから絶対的に正しいのではなく、科学的な知識だから自分に当てはまる確率が高いだけなのです。
試して、失敗して、また試してを繰り返してください。きっと成果がでた!と思えるものが見つかります。
次回はやっと勉強テクです!待ちに待った勉強テクはどんなものだと思いますか?
ではでは〜